雑穀栽培日記 
(たかきび,きび,あわ,ひえ,しこくびえ,とうもろこし) たかきび
  ・・・・⇒7種類の中でとうもろこしが一番早く,約80日後に出穂しました。
     ⇒その次は約90日後にひえ,少し遅れて,あわきびたかきびと続きました。
     ⇒しこくびえは,105日以後に一番遅れて出穂しました。
食品関係の粉粒体(6)
<粉粒体の部屋(4-6)>

 ここでは,雑穀の栽培日記を紹介しています。また,ついでに収穫したそれらを粉体にして,昔小さいときに食べさせてもらった「(たか)きび団子」などの味をもう一度確かめることを目標にしています。

(1) 雑穀とは :きび,あわ,ひえなど小さな種(実)をつけるイネ科の穀物の総称です。英語のミレット(millet)にあたります。粒径の比較的大きいたかきび,ハトムギは通常含まれます。
なお,イネ科以外にも,雑穀と似たような小さい種をつけるアマランサス(ヒユ科),キノア(アカザ科)などの作物は
疑似雑穀と呼び,区別されます。

(2) 雑穀の歴史 :雑穀は人類が紀元前1万年頃,農耕を始めた際の最初の食物です。農耕は,地球の寒冷期に世界各地で始まり,コメ(米)や小麦,イモ類などとともに貴重な食料源となり,大きな経済力をもつ文明を築くことができました。

 雑穀は土壌に対し適応性が高く,乾燥にも耐えることから,アフリカやインドでは今でも重要な主食の一部となっています。これに対し,ヨーロッパ,アジアでは,その役割は
小麦コメに変わりました。

 日本でも,雑穀は縄文時代から栽培されてきましたが,その利用の形態は,酒(焼酎)の原料など以外では,主食としてのコメに混ぜて量を増やすなど補足的なものでした。しかも,その味はどちらかというと,おいいしいものではありませんでした。
 戦後,生活が豊かになり,洋食化が顕著になるとともに,おいしいコメ(コシヒカリなど)の開発もあり,雑穀はほとんど食べられなくなりました。

 しかし近年,雑穀は,昔から食べてきたものだからきっと体にいいのではないか,とかアトピーなどにも効果があるなどの理由から,見直されるようになってきました。また,いろんな料理法なども多数紹介されるようになり,おいしく食べられるようになりました。

 さらに,栄養学的に雑穀の成分を米(白米)と比較してみると,雑穀は
カルシウム,鉄分,食物繊維など現代人の食生活において不足がちな栄養素をより多く含んでおり,ミネラルは3倍,カルシウムは2倍,鉄分は2〜6倍,ビタミンBも多いことが分かってきました。

 最近では,雑穀が
町おこしなど地域活性化の素材としても注目されるようになってきています。

(3) 
雑穀ともち種 :雑穀が主穀に近い形であったのは,縄文時代後期〜晩期頃で,水田稲作が本格的に始まる直前の照葉樹林文化の時代でした。照葉樹林文化の中心地域は中国雲南地方とされ,東はヒマラヤ南部から西は日本まで含まれていました。ここに住む人々(含日本人)は,ねばりの有る食品(=
発酵食品
納豆やナレズシなど)や,モチ種(モチアワ,モチキビ,タカキビ,トウモロコシなど)から作る食品(餅,おこわ,ちまきなど)を好む嗜好性がありました。

「照葉樹林文化とは」を参照。 これら習慣の多くは,現代まで広くもたらされています。
 

(4) (a)きび(たかきび)
 たかきびは,別名「もろこし(蜀黍;唐土)」,「こうりゃん(高梁)」などともいわれています。

 原産地はアフリカで,その起源は古く,
紀元前3000年より以前から栽培されていたようです。その後,アラビアを経て,紀元前2000年頃にはインドへ,紀元前4世紀頃には中国へと伝わり,北部から満州にかけて広く栽培されるようになりました。その後,日本へ伝来しましたが,詳細な時期については分かっていません。
 
 
たかきびは,広大なサバンナ気候に適した作物として,今もアフリカ全土で広く栽培されており,他の穀物と比較しても,小麦,とうもろこし,稲,大麦についで,世界の穀物生産量の第5位を占めています。

 
粒の赤色は,ポリフェノールの色です。上記したように,私が小さいとき(昭和20〜30年代)は,実家でも栽培しており,「きび団子」をつくってもらった記憶があります。そのため,『桃太郎の「きび団子」』は,これだと思っていましたが,社会人になってから実はそうではないと知り,少なからずショックを受けました。

   <たかきびの種>    

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から49日)
(5枚葉,20〜25cm) (5枚葉,35〜40cm)

6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
8月7日:
(播種から95日後)拡大写真
(高さ:60〜70cm) (高さ:80〜90cm) (高さ:1.0〜1.4m)

8月20日:
(播種から108日後)拡大写真
9月4日:
(播種から123日後)拡大写真
(穂が赤みを帯びてきました) (穂がだいぶ赤くなってきました)

(b)きび(もちきび)
 
きび(黍)は,もち種(もちきび)とうるち種(うるちきび)とがあり,もちきびは,やや黄色い粒状です。
 
きびは,新石器時代にヨーロッパからユーラシア大陸全域の文明を支えてきたことが,7000〜8000年前の遺跡の発掘から明らかにされています。また,日本では,4500年前の遺跡から出土しました。
 
 
日本では,「もちきび」と「うるちきび」の2種類が栽培されてきましたが,「うるちきび」は稲の栽培が広まるにつれて廃れ,現在では「もちきび」が主としてつくられているようです(きび団子など)。

   <もちきびの種>    

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
(5枚葉のはずですが,あちこち食われて,
3枚,4枚になっているものが有ります。)

<犯人判明!(ナメクジでした。。。)>

  ⇒急遽,追加の種まきをしました。

6月12日:
(播種から49日後)
6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
大きいもの:17〜20cm
 小さいもの: 7〜8cm
初期の播種部:40〜50cm
後期の播種部:20〜30cm

8月7日:
(播種から95日後)拡大写真
8月20日:
(播種から108日後)拡大写真
初期の播種部:穂をつけています。(高さ:50〜80cm)
後期の播種部:穂はつけていません。(高さ:約35cm)
全部の株(茎)から穂が出ています。
最初の穂では,先端部で脱粒しそうです。

9月4日:
(播種から123日後)拡大写真
 穂がだいぶ白くなり,いくつかの実は落ちて います。

(c)あわ(もちあわ)
 
あわ(粟)はユーラシアが原産で,昔から人類の重要な食用作物であったことが遺跡等から明らかにされています。

 ヨーロッパでは,
紀元前3000年頃のドイツ南部の遺跡から,またコーカサス地方では紀元前5000〜6000年の遺跡から発見され,小麦と並んで重要な穀物であったことがうかがえます。また中国では紀元前5000年頃の黄河文明の遺跡から発見されています。

 一方,日本では,卑弥呼の時代の主要な穀物は「あわ」と「」であったと考えられており,奈良時代には古事記や日本書記にも登場していますが,20世紀になって栽培が急速に衰退しました。

   <もちあわの種>    

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から49日後)
(5枚葉,16〜18cm) (4枚葉,25〜30cm)
茎の根元が赤いです。

6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
8月7日:
(播種から95日後)拡大写真
高さ:60〜80cm たくさん出穂しました。

8月20日:
(播種から108日後)拡大写真
9月4日:
(播種から123日後)拡大写真
茎が細いため,風雨で倒れやすくなりました。
補強が遅れたため,倒れて茎が折れた穂は,
枯れてしまいました。実は徐々に赤くなっています。
実が徐々に赤くなっています。

(d)ひえ
 
ひえ(稗)は,日本や中国が起源と考えられており,全国各地の遺跡からは,その栽培されていた跡が発見されています。また,縄文時代前期の地層からは,ひえの プラントオパール
のたくさん混じった土器片が出土しています。

 
このことから,古代日本人にとって,狩猟で得られる肉や魚,採取された森の木の実,栽培されていたなどとともに,ひえ,あわ,きびなどの雑穀が貴重な食料源であったことは間違いないと考えられています。ひえは,うるち種のみです。

  <ひえの種>     

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から49日後)
(5枚葉,25〜29cm) (5枚葉,60〜63cm)
「分けつ」で本数増加

6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
8月7日:
(播種から95日後)拡大写真
(高さ:80cm〜1m) (高さ:1.1〜1.5m)
それぞれの茎ごとに,
穂がついています。
<穂の長さ:12〜13cm>

8月20日:
(播種から108日後)拡大写真
9月4日:
(播種から123日後)拡大写真
(穂は緑色から徐々に白っぽくなっているようです。) (変化はあまり有りません。)

(e)しこくびえ
 
しこくびえは,アフリカ原産の穀物です。アフリカ北東部の高地において作物化され,紀元前3000年頃にはすでにエチオピアなどで栽培されていたと考えられています。たかきびと同様にインド中央部から南部を経て広がり,ヒマラヤ山脈の山麓や山岳地方などの比較的冷涼な気候に適した品種群ができ,後に中国や日本にも伝わりました。
 
 
しこくびえは,今も東アフリカおよびインド中南部の畑作農業における主要な穀物とされています。

   <しこくびえの種>        

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から49日後)
(5枚葉,7〜8cm) (5枚葉,15〜20cm)

6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
8月7日:
(播種から95日後)
初期播種部:30〜40cm,
後期播種部:約20cm
かなり成長していますが,
このしこくびえのみ
穂が出ていません。

8月20日:
(播種から108日後)拡大写真
9月4日:
(播種から123日後)拡大写真
9月17日:
(播種から136日後)拡大写真
やっと出穂しました。穂は平たく,
ちょうどホウキのような形をしています。
穂が開いてきています。 実が成長してきました。


<参考>
1.
とうもろこし

 
狭義の雑穀には入りませんが,イネ科の重要な穀物として,とうもろこし(コーン)があります。今回は,2種類のとうもろこしの種を播きましたが,これらの成長は,上記の雑穀より,だいぶ速めです。

 とうもろこしは,その起源が,紀元前5000年頃の中南米とされ,この近辺ではいくつかの古代文明(インカ,マヤ,アステカ)が栄えたことで知られています。

 
また,とうもろこしは,世界の四大穀物(コメ,麦,とうもろこし,じゃがいも)のひとつです。

(a)
「コーン(スイートコーン)」

   <スイートコーンの種>
 
(染色されています)
       

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から
49日後)
(5枚葉,30〜36cm) (5枚葉,45〜60cm)

6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
(6枚葉,平均50〜60cm) (高さ:60〜90cm)
とうもろこしが一番早く出穂しました。

8月7日:
(播種から95日後)
(高さ:80〜90cm)
ほとんどの株で,とうもろこしが出来ています。
とうもろこしの大きさ:φ2〜3cm×長さ10〜20cm

(b)
「コーン(バイカラーコーン)」

   <バイカラーコーンの種
(染色されています)
   

5月5日:
(播種から11日後)
5月14日:
(播種から21日後)
5月29日:
(播種から35日後)
6月12日:
(播種から49日後)
(5枚葉,42〜46cm)
(高さ:60〜70cm)
5枚葉,葉幅35mm

(雄花) 雌花<絹糸>)
6月26日:
(播種から60日後)
7月17日:
(播種から84日後)
(高さ約70cm) <高さ:60cm〜1m>
2株に,雄花と雌花(正確には「絹糸」)ができました。
雄花は一番上の位置に,絹糸は上から5〜6番目の葉の位置に
出来ており,受粉しやすくなってます。
ただし,異種株どうしが受粉しないといけないようです。(⇒風媒花)

8月7日:
(播種から95日後)
とうもろこしは2個ほど
しか出来ておらず,
受粉状態が良くありません。

<参考>
2. その他
 (a)
古代米(黒米,赤米など)について,記述しています。→粉粒体の部屋(6)<変わった粉粒体>参照。
 
(b) コメ(稲作)の起源
について記述しています。→粉粒体の部屋(4)ー2参照。

 
(c) そば
これは「雑穀」に含まれません)について記述しています。→粉粒体の部屋(4)-5参照。
 (d) 古事記に記された五穀の起源多賀大社と万灯祭,古事記(琵琶湖の周辺(21)参照。

        <参考文献>
1. 「新特産シリーズ「雑穀」(11種の栽培・加工・利用)」 及川一也著,
(社)農山漁村文化協会刊,2003,10,20発行
2. 「雑穀の自然史(その起源と文化を求めて)」 山口裕文,河瀬眞琴編著,
発行所:北海道大学図書刊行会, 2003,9,10発行
3. 「雑穀(作り方・生かし方)」 吉沢典夫監修,ライフシード・ネットワーク編,
発行所:(株)創森社, 1999,2,28発行
4. 雑誌「つぶつぶ」 2005,03号,発行所:いるふぁ
                                                                             
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